Radiohead-『Kid A』のレビュー及び感想
「このアーティストはずっと同じような音楽をやっていてつまらない」と不満を言っている人をたまに見かけますが、かといって路線を大幅に変えてしまうと、「前の方がよかった、どうして路線変更したんだ」なんて言う人が現れたりします。
いつだってファンというか消費する側は好き勝手言ってしまうものです。
これは音楽に限った話ではありませんが、変わらないのはつまらないし、だからといって変わりすぎるとついていけなくなって評価されない。
このジレンマはアーティスト――すなわち生産者側の人にとって一つの難関ではないでしょうか。
しかし、世の中には『例外』というものが存在します。
それは「あまりにも変わりすぎたのに多くの人に受け入れられ、評価された」という感じのものです。
その『例外』というものに、今回紹介する「KidA」は該当するのではないかと思います。
前回、感想を書いた『OK Computer』の次回作にあたるアルバムなのですが、順番に聴いていくとその異質さに驚くと思います。『OK Computer』でロックの頂点に君臨した『Radiohead』の変貌には多くの人がなかなか受け入れられなかったのではないでしょうか。
ちなみにブログ主はリアルタイム世代ではないので当時の空気感はわからないのですが、聴いた人の困惑が易々と理解できてしまいます。
なんの前知識もなく聴いて、一曲目の「Everything In Its Right Place」の冷たいエレピと、かなり加工されたトムヨークの声が聞こえてきたときは、「本当にこれは『OK Computer』を作ったアルバムなのか……⁉」と驚愕しました。
『商業的自殺』と形容されるのも納得です。
トム・ヨークは、「奴ら(音楽業界のマス連中)が思うほど、大衆の耳は馬鹿じゃない。聴こえのいいものだけを聞かせて金を巻き上げることが音楽産業だということに間違いはないけれど、許容され得る範囲はもっと広い[3]」などとも、当時のインタビューで語っている。
出典:Wikipedia
なんて言っていたみたいですが、普通の人だったら絶対にこんなアルバムは出せないと思いますね~
まず、先ほども紹介した一曲目の「Everything In Its Right Place」からただならぬ雰囲気を感じます。
個人的にRadioheadの中で一、二を争うほどに好きな曲です。
この10/8拍子のリズムに乗せられる不思議なエレピサウンドがたまりません……!
三曲目の「The National Anthem」のベースラインも思わず踊ってしまいそうなくらい、癖になります。
後半になって入る管楽器のカオスっぷりも凄い……
四曲目の「How to Disappear Completely」からやっとギターが入ってきます。
ポリリズムによって生み出される独特なリズムと、遠くから響いてくるオンド・マルトノとストリングスの美しすぎる旋律には思わずため息が漏れてしまいそうです。
何処か遠い場所に来てしまったかのような感覚を味わえてしまいます。
六曲目の「Optimistic」でやっとギターロックらしい曲が聴けます。
これもまた素晴らしい曲……アルバムの中では最も聴きやすい曲なんじゃないかと思います。
八曲目の「Idioteque」ではまさかのテクノ。
普通、バンドでテクノをやろうってなりますかね?
私はバンドをやったことはないのですが、絶対にバンドでテクノをやろうなんて思わないです笑
これまた無機質な感じの曲なんですが、意外とキャッチ―で踊れてしまう感じの曲。
九曲目の「Morning Bell」は性急な5/4拍子のドラムと、浮遊感満載のエレピによる曲。
後半から入るギターのアルペジオの絡みが不穏ながらも綺麗で、そこだけ何度も聞きたくなる。
そして、10曲目の「Motion Picture Soundtrack」で、最初のおどろおどろしい印象とは裏腹に、やけに穏やかな雰囲気でアルバムは締めくくられます。
個人的に、徹頭徹尾隙のないアルバムだと感じました(一曲々々が少し長くないかと思う部分はあるけど、気にならなくなるくらいにいい)。
聴けばきくほど、よく売れたなと思うアルバムです。
素晴らしいには違いないのですが、商業的ではないアルバムなので……
また、1stから聴いてみるの企画の最初に『Radiohead』を選んだのは、この『OK Computer』から『KidA』の流れがあまりにも面白すぎるからです。
順番に聴くことによって、より一層、アーティストの曲を聴くことを楽しめるんじゃないかと思います。
無論、バラバラに聴いたり、好きな曲だけを聴くのもそれはそれでいいんですけどね~
あと、「ギターが殆ど鳴ってないアルバム」という言葉も聴くけど、結構鳴ってない?
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