「0」-青葉市子のレビュー及び感想
今回聴いていくのは青葉市子さんの『0』です。
日本のアーティストですが、知らない人の方が多いような気がします。ですが、結構青葉市子さんは評価が高いアーティストでして、今回聴いていく『0』は彼女が出したアルバムの中でも一、二を争う名盤だと思います。
評価が高いと聞くと、なにか難しいことをやっているのかと思われるかもしれませんが、彼女の音楽は殆どアコギ一本です。アダンの風のようなアコギだけじゃないアルバムもありますが、このアルバムはアコギと彼女のボーカルだけです。
一曲目のいきのこり僕らは初めは快活なギターで始まります。アコギ一本故に、テンポや演奏に強弱をつけて、自由に歌っていくのがいいですね。ギターの音色も綺麗です。
透き通るような、ファルセット成分も感じるボーカルがこれまたいいんですよね。結構リズムは明るめなんですが、何処か影を感じる雰囲気がたまりません。彼女独自の世界に取り込まれていくみたいです。
そして、二曲目のiam POD (0%)
か細いボーカルが心に響きます。アコギの旋律も何処か暗く、聴いていると一抹の不安が胸の奥底に植えつけられるようです。この聴き手を飲み込むような雰囲気がたまりません。
アコギ一本のシンプルなサウンド故に、まるで対話しているかのような錯覚に陥ります。よくよく聞いているとエビグラタンやケチャップといった単語が出てくるんですが、その素朴な感じもいい。
しかし、暗い曲だけではありません。
5曲目のうたのけはいは明るめの楽曲で、ボーカルもいくつか重ねています。二分と短めの曲なんですが、聴いているともっと聴かせて欲しいなと思ってしまいます。ただただ美しく、希望を感じるような曲です。
そして、六曲目の機械仕掛乃宇宙。
12分の大曲なんですが、元々は山田庵巳という方の曲なので、カバー曲になります。原曲の方も素晴らしいのですが、青葉市子さんのこのカバーも素晴らしいです。歌詞を追っていくと切ないおとぎ話のような内容になっているのですが、これがいいんですよね。その歌詞に合わせて歌い方やギターの演奏を変えていくので、どんどん没入してしまいます。
かなりシンプルで素朴なサウンドのアルバムなんですが、この閉じたサウンドがたまりません。聴いているだけで穏やかな気持ちになります。カウンセリングに使えるんじゃないかと思ってしまうほどです。
文句なしの名盤だと思います。
是非、聴いてみてください。