『Ghost Stories』-Coldplayのレビュー及び感想
さて、今回はColdplayの6枚目のアルバムである『Ghost Stories』の感想を書いていこうと思います。
ボーカルのクリスマーティンが離婚したのもあって、かなり内省的なサウンドになっているアルバムです。かといって、初期の頃に戻ったのかというとそうではなくて、冷たいシンセ音や電子音が多く使われています。ギターはさほど目立っておらず、暗さへのアプローチの仕方は全然違っています。
1曲目のAlways in My Headはアンビエントポップ的なイントロから始まる、スローテンポな楽曲です。輪郭がぼやけたような掴みどころのないサウンドが胸に沁みます。リバーブが深くかかったコーラスも夢心地にしてくれます。
個人的にアルバムの中で一番好きな楽曲である「Magic」はベースラインが素晴らしいですね。時折入ってくるピアノのメロディも切ないです。機械的なドラムも今までになかったもので、この無機質さもより一層この曲の冷たさを増幅させているように思えます。
要するに、このアルバムはColdplayにとっての『KidA』みたいなものなんじゃないかと思います。
5曲目のMidnightなんかも今までのColdplayにはなかった楽曲で、溶けていきそうな加工されたボーカルが印象に残る楽曲です。
こういったちょっと実験性を感じる曲が入っているのも、電子音やシンセが目立つのも、なんとなく『KidA』を意識してのことなんじゃないかと思います。ColdplayはRadioheadのファンですしね。
しかし、ここまでの話を総合すると、「あれ、前のアルバムで完全にポップな方面に舵を切ったって言ってなかったっけ」となってしまいますよね。ですが、実はこのアルバムが初期と違う点がもう一つあって、それを端的に表している曲が8曲目です。
まさかの唐突なEDMです。
一応、前曲で長いインターバルが用意されているんですが、だとしてもかなり唐突感が否めません。この曲のせいでアルバムの統一感が薄れたという意見があってもおかしくはないと思います。
ですが、私はこの曲に関してはこのアルバムに収録されてもあまり違和感を覚えませんでした。それは私はこの曲こそがColdplayの変化を一番象徴している曲だと思うからです。
この曲はそれまでの暗さを一気に開放するような明るい曲です。初期はひたすらに内側へと沈み込んでいくような作風でしたが、このアルバムでは沈み込んでいく点では同じですが最後に一気に開放して前へと向いていくような作風になっています。結末が違うんですよね。
この前向きさこそが、初期からこれまでで一番Coldplayが変わった要素なのかなと私は思います。
そういう点において、私はこの曲がこのアルバムに収まるのは必然なのかなと思ったりします。
是非、聴いてみてください。
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