前の小説紹介記事↓
かなり久しぶりの小説紹介記事です。
今回紹介するのは道尾秀介先生の『カラスの親指』です。
彼は『月と蟹』という作品で直木賞を受賞しているんですが、5回も候補になってやっとの受賞だったみたいなんですよね。つまり、4回も候補になって受賞しなかったというわけです。かなり険しい道を進んでいった作家さんのようですね。
今回紹介する『カラスの親指』は道尾秀介先生にとって記念すべき一回目の直木賞候補作となった作品で、彼の代表作によく挙げられているイメージですね。大体これか、向日葵の咲かない夏が代表作として語られているように思います。
で、この『カラスの親指』を読んで思ったことなんですが、かなりライトな感じで読みやすいなと思いましたね。
まずはあらすじを見ていきましょう↓
人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは? 息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。道尾秀介の真骨頂がここに! 最初の直木賞ノミネート作品、第62回日本推理作家協会賞受賞作品。(講談社文庫)
ど派手なペテン、仕掛けてやろうぜ!!
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205688
「このミス」常連、各文学賞総なめの文学界の若きトップランナー、最初の直木賞ノミネート作品
要するに現状に困っている人々が協力し合って、その状況を打破するといった感じのあらすじですね。
直木賞は純文学の賞で、そんな賞の候補になる作品はかなりかたいというか、難しい作品だろうなと思ってしまいがちなんですが、少なくともこの小説はそれにはあてはまらないと思います。文体も軽くて読みやすいですし、普通にライトノベルとしても読めるような感じです。
個性豊かなメンバーの会話は面白かったですし、企てた大計画を実行に移しているときは結構ハラハラドキドキしながら読めましたね。
最後の終わり方も心に残るような感じでいいです。あまり小説を読んだことのない方にもおすすめしやすい作品だと思いました。
ただ、少し気になるのは……ちょっとご都合主義かなという所ですかね。私は創作にご都合主義はあってなんぼと考えているのですが、この作品は読んでいて「ええ~」となることがありました。
最後にみんな大好き伏線回収の時間がやってくるんですが、説明されても「そうなるか?」とか思ってしまう部分がいくつかあって、ちょっと肩透かしを食らった感じでしたね。流石にそうはならんやろと。
私は全然真実にたどりつけてなかったんですが、読んでる途中に答えにたどりつけたとしても、これが真実だとは思わないだろうな感じでした。思いついたとして、「いや、ありえんだろ」とその可能性を完全に排除していたでしょう。真実に納得できるかは人それぞれですが、私はちょっとイマイチかなと思っちゃいました。
ですが、そういった粗も気にさせない勢いのある作品だとは思うので、読んで損はないと思いますね。
是非、読んだことのない方は読んでみてください。