『The Worm』- HMLTDのレビュー及び感想
今回、聴いたのはHMLTDの『The Worm』です。
どうしてこのアルバムを聴こうと思ったのかというと、この作品が出たのは2023年の4月7日なのですが、その日に出たアルバムで注目しているものがなく、AOTYのNew Releaseを適当に眺めていたときにこのアルバムが目に止まったから、というのが理由です。なので、最初は全く期待なんてしていなかったんですよね。作業の退屈さを紛らわすBGMになれば程度に考えていました。
しかし、実際に聴いてみて……あまりの壮大でパワフルなサウンドに圧倒されてしまいました。いや、こういう偶然の出会いというのがあるから、音楽を聴くのが止められませんね。
端的に言えば、最高の作品でしたね。
と、まずはHMLTDというアーティストがどんな方なのかということからですね。
HMLTDとは、2015年にロンドンで結成されたイングランドのアート・パンク・バンドです。メンバーは、ボーカルのヘンリー・スパイチャルスキー、ギタリストのジェームズ・ドノバンとデュック・ピーターマン、ベーシストのニコ・モーンブラット、ドラマーのアキレアス・サランタリス、キーボーディストのセス・エヴァンスです。
彼らの音楽は、ポストパンク、ニューレイヴ、アートロック、エクスペリメンタルロック、グラムロック などのジャンルに分類されます。彼らはまた、EDMやエクスペリメンタルポップをギター中心のサウンドに融合させることで、前衛的な評価を受けています。
https://en.wikipedia.org/wiki/HMLTD
アルバムを聴いてみたんですが、かなりカオティックな感じに仕上がっています。
一曲目の後のWyrmlandsはジャズ的なプログレッシブロックです。これを聴いたとき、頭をガツンと殴られたような衝撃がありましたね。分厚いコーラスに、美しいピアノ、ストリングス、サックス等の様々な楽器が縦横無尽に動き回り、独特な雰囲気を作り出しているのがいいです。特に怪しげなベースラインがたまりません。
途中で穏やかで静かなパートが入るのもいい。
歌い方やコーラスもあいまって、オペラを聴いているような気分になります。それくらい壮大で世界観が感じられますね。
そして、三曲目のThe End Is Now。
前曲から繋がっているのに、雰囲気がガラッと変わります。それなのに全く違和感がないのが凄いです。聴いていて楽しくなるような感じがいいですね。
しかし、壮大な曲ばかりというわけではありません。
4曲目のDaysはピアノを主体としたしっとりとしたバラードソング。アンビエントやエレクトロニカ的な要素も感じられます。女性の優しげなボーカルが入ってくるタイミングもばっちりです。
六曲目のLiverpool Streetもピアノを主体としているんですが、ストリングスがかなり目立っています。深い所から抜け出していくような開放感のあるサウンドです。
どの曲も感動的な展開ばかりで、聴いていて圧倒されるばかりですね。
特にそれを感じるのが八曲目Past Life Sinner‘s Songですね。
アルバムの中だと一番長い楽曲で7分あるんですが、全然長いと感じませんね。今までの曲の総決算といった感じです。非常に深みのある楽曲だと思います。最後の方はオルガンを主体とした穏やかなサウンドになり、最後の曲であるLay Me Downもまた静かに終わっていきます。
最初から最後までパワフルに駆け抜けた作品だと思いましたね。
中世イングランドを舞台にした壮大なコンセプト・アルバムで、巨大なワームに飲み込まれた世界での政治的・心理的な闘いを描いたものらしいです。ちょっとまだ歌詞を読み切れていないのですが、かなり完成度の高い作品だと思いましたね。
是非、聴いてみてください。