『Program Music III』-KASHIWA Daisukeのレビュー及び感想
今回、聴いていくのはKASHIWA Daisukeの『Program Music III』です。
KASHIWA Daisuke(カシワダイスケ)は日本の音楽家、柏大輔によるソロユニットである。広島出身、東京在住。自身の創作活動の他、劇伴作曲家、リミキサー、マニピュレーター、ミックス & マスタリングエンジニアとしても活動。
https://ja.wikipedia.org/wiki/KASHIWA_Daisuke
結構前にFishmansのLong seasonみたいに一曲35分みたいな大作はないかなと思って探していたときに見つけた作品なんですが、この『Program Music III』の一曲目であるsonsはなんと51分です。
一曲50分超えなんてどんな曲なんだ……と興味を抱いたので聴いてみる次第です。
それでは聴いていきましょう♪
全曲感想
①sons
一曲51分の超大作。アルバムのほとんどをこの曲が占めています。適当な所で曲を分けて感想を書いていこうと思います。
≪0:00~≫
最初はピアノから始まっていき、すぐに二つのストリングスが入ってきます。このピアノが深いリバーブがかかっていて美しい。右と左のチャンネルで別々に動いていくストリングスも雰囲気を作っています。ここだけ空気が澄み切っているかのように感じられるほど綺麗です。
途中で電子音がノイズのように入り、それが止むとアコギのような透き通るような音が遠くから聴こえてきます。一定じゃないライドシンバルも加わり、徐々に熱を帯び始めていきます。
ただただストリングスとピアノのハーモニーにうっとりとしてしまいます。
≪6:48~≫
ドラムが入ってきて曲が加速していきます。ギターの音も入ってきて、どんどん高まっていきます。この展開が素晴らしい。切ない夏の日を思い出すような爽やかさを持ちながらも、何処か切ない雰囲気は物語のラストパートにピッタリな気がしますね。暴れまわっていたドラムもいい。
≪9:50~≫
ここで唐突にドラムがバスドラで四つ打ちになり若干勢いが弱まります。ストリングスがいくつにも重なって、熱も冷めないままにまた熱くなっていきます。
≪11:50~≫
ここでやっと静まり返り、ピアノとライドシンバルの音だけになります。
《12:38~》
ストリングスとピアノによる不穏なパートが始まります。女性のなにを言っているのかわからないボーカルが加わり、さらに不安げな雰囲気に拍車がかかります。カツカツみたいなよくわからない音や電子音も加わり、先ほどまでの雰囲気はどこへやら、どんどん落ちていくような感じになっていきます。
《15:30~》
有機的な音が少なくなり、電子的なサウンドが展開していきます。全く別の曲のような雰囲気です。耳が痛くなりそうなくらいの凶悪なシンセサウンドがいいですね。途中から時計の針のような音が入り始めます。
《17:41~》
ピアノの音が戻ってきて、電子音の嵐も弱まり、ストリングスが最初の頃のような明るさを取り戻そうと動き始めます。絶叫のようなノイズ音が途中で入り、這い上がろうとしているような印象を受けます。
《19:45~》
何処かへ迷い込んでしまったかのようなプラック的なサウンドが入り、別世界に変わります。足音のような四つ打ちのダークなダンスポップで聴いていて戸惑いますね、この変化は。
《21:34~》
また静まり返りピアノとリバーブの深いボーカルだけになります。何処か遠い場所に捨てられたような感じ。このパートのピアノも素晴らしい。けど、所々に入るノイズがうっとりとさせてくれませんね。ストリングスも途中から戻ってきて、冒頭のような雰囲気にやっと戻ってきます。
ノイズが残りながらもドラムが戻ってきて、希望を見つけて前へ進んでいくような感じがします。
《25:24~》
が、また音がなくなり不思議な感じになります。右と左のチャンネルを行き交うフィルターのかかったドラムやギターの捻じれたフレーズが頭に残ります。厚いストリングスがどんどん飛翔していくように展開していって気持ちいいです。
《28:50~》
ピアノとアコギによる静謐なパートが始まります。そして、段々とテンポが速まっていき、そしてカオスと化してまた静まり返ります。
《32:08~》
オーケストラちっくな壮大なストリングスサウンドがたまりません。メリハリのある展開が心を躍らせますね。
《34:40~》
ヘヴィなギターが加わり、危機感を煽るようなサウンドになってます。まるで、なにかに追いかけられているような感覚を覚えるような攻撃的な音がいいですね。
《35:48~》
一転して美しい静かなパートに切り替わります。様々な音が切り貼られたような音の上で美しい何処までも響くようなピアノが鳴り続けます。ピアノの音だけになってもそれはずっと鳴り続けて、暫くすると神秘的なコーラスが入ってきます。
《39:35~》
またダンスポップ的な四つ打ちバスドラムが入ってきます。ベースもそれっぽい感じになっていますね。しかし、ピアノの音色は変わらず神秘的なままです。そして、まさかのここにきてラップ的なボーカルが入ってきます。本当にやりたい放題といった感じ。
《43:42~》
再び静謐なパートに戻ってきます。この静けさとカオスなパートとの行き交いはまるで異世界を転々と移動しているような感じがします。段々とストリングスがまた盛り上げていきます。リバース音的なものが入り、何処かへ戻っていくような感じ。
《49:03~》
壮大なストリングスが入ってきます。様々な聞き覚えのある音が聴こえ、なにかを治していくような風にも感じられます。そして、一瞬の無音を挟んだ後に、ピアノだけの寂しいサウンドが始まります。
②talion
ピアノの優しい音で始まります。それをバックに加工された語りが聴こえてきます。普通にうっとりとしてしまう楽曲なんですが、どうしてこれを二曲目としてわけたんでしょうか。普通に一曲目の一部にして一曲のアルバムにしてしまえばよかったような。その辺りの意図は私には掴めてないです。
総評
1曲51分、ポストロック、ヒップホップ、アンビエント、テクノといった様々な音楽にどんどん切り替わっていくのがまるで映画を見ているように感じられる作品でした。
ストリングスやピアノ主体の静謐なパートはただ美しく、ロックやヒップホップといった様々なジャンルが繰り出されるカオスなパートはただ圧倒されるばかりで、それらが何度も繰り返されるメリハリのある展開に驚かされるばかりで、51分があっという間に感じられました。
よくこんなに色々な音楽を一つの曲に纏め上げられるなと思います。闇鍋を滅茶苦茶絶品に仕上げたような感じですね。
どんどん展開されていくサウンドに、まるで映画を見ているかのようで、様々な解釈ができるので素敵だなと思いました。
正直、二曲目は一曲目に含めるか、そもそもアルバムに入れないかした方がいいと思うんですが、これはこれで綺麗でいい曲なので困りますね。
是非、聴いてみてください。