追記:2023年10月8日更新
慟哭/貫井徳郎の感想
前の小説紹介記事↓
今回紹介するのは貫井徳郎さんの『慟哭』という小説です。あらすじはこんな感じ↓
連続する幼女誘事件の捜査が難航し、窮地に立たされる捜査一課長。若手キャリアの課長を巡って警察内部に不協和音が生じ、マスコミは彼の私生活をすっぱ抜く。こうした状況にあって、事態は新しい局面を迎えるが……。人は耐えがたい悲しみに慟哭する――新興宗教や現代の家族愛を題材に内奥の痛切な叫びを描破した、鮮烈デビュー作。
創元推理文庫
創元推理文庫の「推理」という名の通り、ミステリー小説に分類される作品です。
ミステリー小説は個人的に好きで結構読むことが多いのですが、読んでいてこう思うことがありませんか?
ああ……ミステリー以外の部分がつまらん。
なんというか、ミステリーの謎や探偵の推理の描写に文章を割いているせいか、登場する人物の心理描写や人間関係の描写がおざなりになりがちな気がするんですよね。なんか、登場人物が物語の駒みたいに動いていているように見える時があります。
それが悪いと言いたいわけではないですし、ミステリー小説なんだから謎やトリックがしっかり書けていればいいという意見に反対するわけでもありません。ですが、私は登場人物の心理描写を読むのが好きなのです。これを読んでくださっている人にも、そういった方はいるんじゃないでしょうか。
そんな人におすすめなのがこの『慟哭』という小説です。
この小説はミステリー部分を書きながらも、あらすじ部分にある「幼女誘事件」の被害者の目線から、その悲痛な現実や心理を深く描写しています。これが私にとってはたまらなかったですね。また、この描写の過程で新興宗教が絡んでくるんですが、これがまた素晴らしいです。読んでいてゾクゾクしてしまいます。
肝心のミステリー部分も読み終わるとよくできてるなと思うのですが、私でも種明かし前に犯人が誰かわかってしまったので、コアなミステリーファンの方にはミステリー部分は満足できないかもしれません。
ですが、その謎解きの先にある真実がこれまた心を抉るんですよね……幼女誘拐事件がどんな結末を迎えるのか、読んだことのない人はその目で確かめてみてください。
全然、ミステリーを読んだことのない、好きじゃない人も気に入ってくれるんじゃないかと思います。
是非、読んでみてください。