
「石の糸」- カネコアヤノのレビュー及び感想
良さが理解できない名盤というのは誰しもあると思います。
ただそれにも程度があって、全く良さがわからないというのもあれば、全体的に好きだけどここが無理とか、ここさえ理解できれば好きになれそうという作品のあるアーティストもいると思います。
私にとって、カネコアヤノは後者にあたるアーティストです。
凄くサウンドは好きなんです。ですが……ボーカルがどうしても耳に馴染んでくれない。
このバックの音に対してズレるというか、外れる感じがどうしても受け付けない。聴いていて胸がざわざわするというか、不安な気持ちになってしまいます。
ですが、そこを乗り越えられれば好きになれる気がする……というわけで、前置きが長くなってしまったのですが、突如出た新譜「石の糸」を聴きました。
個人的には前作よりも好き。
今回はサイケ感が増したような気がします。この気怠げな雰囲気がとてもいい。
前半はちょっと微妙な印象ですが、後半のさびしくない以降の楽曲が素晴らしいです。
6曲目の難しいのヘヴィでシンプルなギターに折り重なっていく低い男声とボーカルがいい。
7曲目のWALTZは本作で一番好きな楽曲で、ノイズギターの轟音の中で主張するサイケデリックなメロディが陶酔感があって素晴らしいです。
石と蝶の静と動を行き交うような感じも凄く癖になります。
だけどやっぱりボーカルへの苦手意識は本作でも拭いきれなかったですね。
一曲目とかでも最初のアコギで「あぁ〜いい~」となっていたのに、声が入った瞬間に一気にテンションが下がったりしましたし。
しかし、時折この感じが楽曲にはまる瞬間があるのも確かなんですよね……難しい。
TLを見ていると日本人リスナーからの評価がかなり高いアーティストで、この新譜が出た時も賑わっていたのですが、その輪にはまだ入れなさそうです。
ですが、いい作品だと思います。こういうノイズギターはやはり好き。
一番好きな楽曲:WALTZ